CAOS Japan
人工股関節三次元評価方法の指針(2014年版) †
Takao M., Sakai T., Hamada H., Sugano N. (2018) Pelvic and Femoral Coordinates and Implant Alignment Representations in THA. In: Sugano N. (eds) Computer Assisted Orthopaedic Surgery for Hip and Knee. Springer, Singapore
https://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-981-10-5245-3_7
最適な人工関節再建を追及するためには人工関節設置の三次元的評価が必須である。インプラントアライメント評価、可動域シミュレーションなど人工関節設置を三次元的に検証するためには、まず基準座標を設定することが必要であり、研究者相互の研究成果の互換性を高めるためにも座標系を標準化することが望ましい。またインプラントアライメントや可動域の記述方法も標準化が必要である。2014年第8回日本CAOS研究会のパネルディスカッションにおいて会員による議論を行い、世話人を中心としたワーキンググループによって本指針を決定した。本指針では複数の方法を提示しその中でも日本CAOS研究会として推奨するものを示す。尚本指針は暫定的なものであり、今後研究が進捗するとともに適宜変更していくものとする。また研究者の研究手法を拘束するものではなく、あくまで指針として参考にしていただくことを趣旨としている。
- Radiographic定義で記載[1] 【推奨】
- a. 3軸成分(前捻角、屈曲角、内反角)で表示。【推奨】
- ステム座標系の大腿骨座標系のXY,YZ,ZX平面への投影角
- 推奨理由:各社すべてこれを採用しており、ステムアライメントのうちステム前捻角のみを参照とするCombined Anteversion Theoryの妥当性が不明のため
- b. オイラー角表示(つまり前捻角をステム軸まわりの角度で表示)
- 前捻→内反→屈曲または前捻→屈曲→内反どちらかを明示する。
- a. 解剖学的座標系:
- 両上前腸骨棘と両恥骨結節の中点からなる平面(anterior pelvic plane)で定義[2, 3]。
- ブレインラボ社、エースクラップ社使用座標系
- b. 機能的座標系1【推奨】:
- 解剖学的座標系に臥位での骨盤傾斜を加えた座標系。
- レキシー社使用座標系
- 推奨理由:仰臥位で矢状面の骨盤傾斜は、カップ設置基準として反映させたほうがいいという点ではコンセンサスがえられているが、水平、正中基準については一定の見解がないため。
- c. 機能的座標系2:
- 機能座標系1に加えて水平基準を両側の涙滴に相当する月状窩下縁を結ぶ線とした座標[4]。
- d. 機能的座標系3:
- 機能座標系1に加えて水平基準を坐骨結節、正中基準を仙骨中央と恥骨結節を結ぶ線を基準とした座標系
- ストライカー社使用座標系。
- e. ISB座標系:
- 両上前腸骨棘と両上後腸骨棘の中点からなる平面で定義[5]。
- a. 後顆平面座標系1【推奨】:
- 大転子後縁、両大腿骨後顆からなる平面(大腿後顆平面、retrocondylar plane, table top plane)[6]を基準とした座標。Z軸は転子窩(trochanteric fossa)と顆間部最遠位端を結ぶ線の後顆平面の投影軸[7]。
- 転子窩の同定についてはAppendix 3参照。
Appendix.pdf
- 推奨理由:ステムアライメント評価において推奨する。術前、術後の基準がかわらないことがのぞましいため。アナトミカルステムの場合転子窩の同定が困難な場合がある。
- b. 後顆平面座標系2 【推奨】:
- 大腿後顆平面を基準とした座標。Z軸は骨頭中心と顆間部最遠位端を結ぶ線。
- 推奨理由:可動域解析において推奨する。骨頭中心と膝中心を結ぶ機能軸を内外転の基準としたほうが、臨床的な内外転の中間位の解釈に近いため。屈曲伸展方向については機能軸と後顆平面の角度差が少なく、後顆平面がアライメント評価や、術中参照の基準ともなっているため、後顆平面を採用した。
- c. ISB座標系:
- 骨頭中心と両大腿内外側上顆からなる平面を基準とした座標。
- Z軸は骨頭中心と大腿内外側上顆を結ぶ中点を結ぶ線[5]。
- 注1:ステムアラメント評価と可動域解析で座標系が異なることの不利点は今後検討する必要がある。
- 注2:膝中心の定義:顆間部最遠位端[8]、PCL付着部[9]、大腿内外側上顆を結ぶ中点[5]、大腿内外側後顆の近似球中心を結んだ中点[10]などあり定まっていない。今後検討を要する。
- AccuracyとPrecisionを区別する。Accuracyはt-test(parametric)、Mann Whitney U-test(non-parametric)にて評価する。PrecisionはF-test(parametric)、Levene test(non-parametric)にて評価する。
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3. Lewinnek GE, Lewis JL, Tarr R, et al. Dislocations after total hip-replacement arthroplasties. J Bone Joint Surg Am. 1978;60:217-20.
4. Sugano N, Nishii T, Miki H, et al. Mid-term results of cementless total hip replacement using a ceramic-on-ceramic bearing with and without computer navigation. J Bone Joint Surg Br. 2007;89:455-60.
5. Wu G, Siegler S, Allard P, et al. ISB recommendation on definitions of joint coordinate system of various joints for the reporting of human joint motion--part I: ankle, hip, and spine. International Society of Biomechanics. J Biomech. 2002;35:543-8.
6. Kingsley PC, Olmsted KL. A study to determine the angle of anteversion of the neck of the femur. J Bone Joint Surg Am. 1948;30A:745-51.
7. Sugano N, Noble PC, Kamaric E. A comparison of alternative methods of measuring femoral anteversion. J Comput Assist Tomogr. 1998;22:610-4.
8. Grood ES, Suntay WJ. A joint coordinate system for the clinical description of three-dimensional motions: application to the knee. J Biomech Eng. 1983;105:136-44.
9. Yoshioka Y, Siu D, Cooke TD. The anatomy and functional axes of the femur. J Bone Joint Surg Am. 1987;69:873-80.
10. Sato T, Koga Y, Sobue T, et al. Quantitative 3-dimensional analysis of preoperative and postoperative joint lines in total knee arthroplasty: a new concept for evaluation of component alignment. J Arthroplasty. 2007;22:560-8.