ご挨拶

超高齢社会において健康寿命をのばす、重要な役割を担う人工関節

本講座は最先端の医学と工学技術を融合し、関節疾患や外傷の病態を解析し、関節温存治療や人工関節による関節再建法の知見をさらに深め、高機能で長寿命な次世代人工関節開発とともに、それを活かす高精度手術のためのコンピュータ外科学研究を行なう拠点として2008年10月に設立されました。

人工関節手術は、各種関節疾患や骨折などの外傷で損傷し、機能を失った関節の痛みをとり、安定性と運動性を回復させる整形外科領域で重要な治療手段であり、超高齢社会においては、健康寿命をのばすための重要な役割を担っていいます。

人工関節は、従来は長期耐用のために日常生活での動作制限や若年者への適応制限を行っていましたが、材料やデザイン技術の改良が進む中、より活動的に生活しても長期耐用が可能なものが開発されつつあります。

運動器医工学治療学寄附講座 教授
菅野 伸彦

臨床医学と連携した研究により、今後も大きく発展

特に関節摺動部の材料やデザインは、この活動性を維持しながら長期耐用できる最も重要な鍵で、金属学、ポリマー化学、セラミックス化学、ナノテクノロジーなど様々な領域で研究されてきましたが、実際の生体内での動態や物性変化の分析、手術手法の影響など臨床医学と連携した研究の必要性が高く、それにより今後もさらに大きく発展すると思われます。

さらに、よい材料やデザインの人工関節を有効かつ安全に臨床使用するためには、ナビゲーションやロボティックスシステムを用いたコンピュータ支援外科技術が必要です。

一方で関節温存治療である骨切り術でも、生体力学的に理にかなった手術を計画通りに実行する必要があります。骨壊死再生治療においてもコンピュータ手術支援は成功の重要なカギとなっています。

本寄附講座では、コンピュータ外科学(ナビゲーション、ロボティックス)による関節疾患及び外傷の形態および病態解析、疫学研究、画像データベース構築、最適人工関節設置法研究、人工関節の生体反応解析、関節摺動部材の応力解析・破壊解析、人工関節用次世代材料として複合材インプラントの開発及び臨床応用研究を行っています。